トリコじかけになる

観そうでみない映画・本・漫画etc.を紹介していくブログ

青春小説『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ感想

 

f:id:francobollo:20150906155558j:plain

 

どうも、ドラクエ8がやってみたいけどRPG飽きちゃう癖があるのでためらっているアンヂです。う~ん、どうにも途中衛飽きる癖あるんですよね、ゲームより映画とか小説が好きなんです。

 

夏の終わりに青春小説を、ということで

桐島、部活やめるってよ』/朝井リョウ/集英社文庫 を読みました。

 

映画版はまだ未視聴なので小説版の感想です。

 

 

・あらすじ

 舞台は田舎の県立高校。バレー部キャプテン・リベロの桐島が突然部活をやめた。そこから、周囲の人物へわずかな波紋が広がっていく。部活・校内での立場も全く違う5人に起こった変化をそれぞれにフォーカスをあてて描く。

 

・感想

 5人の人物が出てくるのでそれぞれについて感想を書きます。

 

・小泉風助

 桐島に最も近い人物でバレー部のリベロ。桐島はバレー部のキャプテンで同じポジションだったので、彼がいなくなって試合に出場できるようになった。けれど、なにか違う。それはニカッと笑う桐島の笑顔がないことであったり、キャプテンの背中に貼るテープのことであったりする。結果的に小泉風助は彼が部活をやめたことで試合に出られるようになるのだが、それはなにか違うと感じてしまう。ささいなことで感じる違和感ってあるなと思った。自分が試合に出られるのを素直に喜べない心の葛藤を描いていて、せつない。

 

・沢島亜矢

 ブラスバンド部の部長。女子高生の片思いの恋を描く章で胸がこちらもせつない。好きな人に彼氏がいたってわかった瞬間ってそりゃ泣きそうになるよね。

 

・前田涼也

 一番共感を覚えた登場人物。映画部でいわゆるイケてない男子。映画版では彼目線で話が進むらしいです。同じ映画部の武文といつも教室の隅で映画雑誌片手に話をしている彼にぼくは自己投影してしまった。この章からスクールカーストについても触れてくるのだけど、その描写がリアルで関心した。誰もが感じているクラス内の壁。自分達がクラス内で何番目か、口には出さないけどそういうのって肌で感じるものです。

 

・宮部実果

 亡くなってしまった姉の影を背負いながら暮らしていくってどれほど辛いことだろう。お母さんは自分を忘れてしまって大好きな姉のことだけ覚えている、そしてその姉を演じながら生きる宮部実果。ソフトボール部でもクラス内でもイケてる女子の実果だけどその内面は一般的な17歳の女の子となんら変わらない。それと、クラスではイケてる女子仲間とも本当はつながってはいない、孤独さみたいなものも感じた。ラストすごい泣ける。

 

・菊池宏樹

 クラスでもトップクラスにイケてる男子。その目線から見たクラスでイケてない前田涼也はどういう風に写ったのか。将来のことや、友人とのこと、高校生の等身大の不安も描いている章。前田涼也とこの章があわせて一番好きでした。「周りの超えもきこえないくらい夢中になれるものがあいつらにはあるんだ」本気になれるものがあるって最高に羨ましいときありますよね。

 

 

 

 桐島の章がないのはきっと桐島にもこの主人公たちのようなドラマがあるんだよ、って伝えたいのだと思う。人にはそれぞれのドラマがあるみたいな。彼の物語を自分達で考えてみて!って遊びを残してくれているようで好きな試みです。

 

 スクールカーストってどこの学校にもあるもので、私は小中高とどれも下のほうでした。なので前田涼也に最も共感を感じたのだと思う。菊池宏樹が彼に感じたような感情を私もイケてるやつらに思われていたのかな?もしそうだとしたら嬉しいような、恥ずかしいような気持ちがありますね。たぶんないけど・・・(笑)

 

 この小説をまだ19歳の大学生だった朝井リョウ先生が描いたのは素晴らしいと思う。19歳というどこか大人になりきれない年齢で書いたからこのような淡いけどどこか説得力のある小説になったのではないでしょうか。朝井先生は2012年新潮社『何者』で芥川賞を男性では最年少で受賞しています。そちらもいま買ってきて手元にあるのでまた感想を書こうと思います。あと映画版も観たら感想書くのでお楽しみに。